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新型コロナウイルス感染症対策の雇用調整助成金での雇用管理の難しさ
皆さんこんにちは社労士の藤武です。
9月末に期限を迎える予定であった雇用調整助成金の特例措置、緊急雇用安定助成金、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下「雇用調整助成金の特例措置等」という。)については、本年12月末まで延長することが発表されました。
これにより、まだまだ業務が正常に稼働していない企業が多く救われることとなります。
非常に有意義な延長であると思います。
標題に雇用管理の難しさと記載しました。
何を言わんとしているかといいますと、いわゆる休業手当の支払率と従業員の働く意欲のバランスの問題です。
休業手当とは、使用者の責めに帰すべき事由により休業させた場合に平均賃金の60/%を支給しなければならないものです。
今回の新型コロナウイルス感染症では、事業主が企業の業績悪化のために従業員を休業させた場合に支給するという位置づけになります。
そして、この休業手当は、平均賃金の60%とされています。
平均賃金とは過去3ヵ月の1日あたりの賃金額を指します。
この平均賃金の60%の支給率により支給される休業手当は、実際に労働を予定する日に支給しますので、日曜祝日など当該事業場で休日とされている日には支給されません。
したがって、60%の支給率によって計算された休業手当は、通常20日~22日分支給されることになりますので、本来月給で支給される方にとっては、実質50%程度の給与額ということになってしまいます。
これは法律上の取り扱いですので、一応損得を唱える問題ではないのですが、私は個人的に実質50%の支給になれば受け取る従業員は生活が厳しいだろうなと感じていました。
さて、そして今回この新型コロナウイルス感染症による雇用調整助成金が多く活用されています。
また上記の雇用調整助成金の特例措置等において、助成金の率は休業手当の支給率を100%とした場合には、100%の助成金支給が行われます(15,000円の上限あり)。
これにより、使用者は安心して給与を保障し、それに見合った助成金が支給されることになりますので、私の立場でも使用者の皆さんにぜひ100%の支給率で給与を支給して上げてくださいとお伝えしてきました。
ところが、期間を重ねるごとに気になる相談が舞い込むようになります。
それは、「従業員が休業にしてほしいと言ってきている」というものです。
もちろん休業手当とは使用者が一方的に休ませるからこそ支給するものであり、従業員が休業にしてほしいと依頼して支給するものではありません。
もちろん、このような場合は休業手当は支払ってはいけませんと、お伝えをしているところです。
しかし、なぜこのようなことになるかというと、休業手当を100%の支給率で支払っているからにほかなりません。
従業員さんにしてみれば、仕事をしてもしなくても給与は補償されるわけです。
それなら、休業にしてもらって働かずに給与をもらえるということを魅力的に感じることになります。
私は今回のこれらの相談や事例を経て、本来の休業手当の支給率が60%であることの理由を理解することができました。
働けば100%給与は支給される。一方的な休業とはいえ、働かないならば100%は支給しないということが、労務管理上は非常に大切なことなのだということなのです。
いわゆるモラルハザードを引き起こす恐れがある今回の特例措置。
もちろん、今は国難の時期であり、働くということが難しくなり生活も不安を抱える以上、休業手当100%をすることは従業員さんの大きな安心につながると思いますので賛成です。
ただ、本来の休業手当の支給率が100%ではない理由、それは理解しておく必要があると今回理解できた気がします。
藤武雅之