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退職について~終~
皆さん、こんにちは!社会保険労務士の吉田です。
4月も後半に入って桜もいつしか盛りを過ぎましたが、最近は地域によっては夏日のように暑い日が続いて、少し早いですが、初夏の訪れを感じさせるような季節になってきましたね。
さて、前回は退職の撤回について取り上げさせていただきましたが、今回でいよいよ退職については最後の回となります。
最後に取りあげさせていただく内容としては、退職に伴う手続きと引継ぎに関する留意点をお伝えさせていただきます。
<退職に伴う手続き>
1、退職届の受理
退職予定日の14日より前、もしくは会社の就業規則に定められた期日までに退職の意思を表明した場合には会社はその申し入れを拒否できません。なお、退職日については、民法上の定めが就業規則よりも優先されます。たとえば、就業規則で退職予定日の1ヶ月前の申し出が必要である旨が規定されている場合に、従業員が20日前の申し出を行ったとしても法的には問題がないことになります。
2、貸与物等の回収
【貸与物】社員証・制服・会社備品の携帯やPCなど、会社から従業員への貸与品はすべて回収します。貸与品の一覧を作成し退職する従業員に渡すなどして、回収漏れに注意しましょう。機密情報漏洩や個人情報流出を防ぐため、従業員の名刺や顧客や取引先の名刺についても回収するのが一般的です。名刺の取り扱いについては、あらかじめ規定しておきましょう。
【仕事に関する資料やデータ】業務のために従業員が作成した資料や、顧客データなども回収対象です。会社の機密情報にもなるので、必ず回収しましょう。
【健康保険証】従業員は退職後、健康保険の資格を喪失します。健康保険資格の喪失手続きの際に、従業員の退職の翌日から5日以内に、事業所を管轄する年金事務所へ健康保険証を返却しなければなりません。従業員の健康保険証は退職日までに必ず回収するほか、扶養家族がいる場合は扶養家族の分も合わせて回収が必要です。
3、社会保険・雇用保険の資格喪失手続き
【社会保険】社会保険に含まれる健康保険および厚生年金の資格喪失手続きは、資格喪失日から5日以内に管轄する年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」と「本人及び扶養家族分の健康保険証」を提出しなければなりません。
【雇用保険】雇用保険の資格喪失手続きは、退職日の翌々日から10日以内に事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届(以下、資格喪失届)」と「雇用保険被保険者離職証明書(以下、離職証明書)」を提出します。また、喪失の際には添付書類として賃金台帳、出勤簿を提出することで離職票が交付されます。なお、退職者が離職票の発行を希望しない場合には、資格喪失届のみ提出します。ただし、退職者が59歳以上の場合は、本人の希望の有無にかかわらず離職票を発行するため、離職証明書および賃金台帳、出勤簿を資格喪失届とあわせて提出しなければなりません。
4、住民税の異動届の提出
給与から住民税を天引きする特別徴収を行っている場合は「給与支払報告に係る給与所得異動届出書」を従業員の方が居住する市区町村に退職日の翌月10日までに提出します。
5、源泉徴収票の発行
会社側は源泉徴収というかたちで従業員の給与から所得税をあらかじめ差し引いており、従業員の退職時に退職する年の申告・納税した所得税額が記載された「源泉徴収票」を発行します。源泉徴収票には、所得税のほかにも退職する年の1月1日から退職日までに支払った給与や賞与額、控除した社会保険料などが記載されています。なお、源泉徴収票は退職後一か月以内に退職者へ交付する義務がありますので、違反した場合は罰則が科せられます。
6、書類の発行・郵送
1~5までの手続きが完了しましたら、上記の源泉徴収票、離職票以外に加入時に「雇用保険被保険者証」を会社で保管している場合は返却しましょう。必ずしも会社が発行する義務はありませんが、本人が希望する場合には「退職証明書」を発行しなければなりません。なお、他にも「健康保険資格喪失証明書」という国民健康加入のために必要なものとして、資格喪失後に必ず交付される書類ではありませんが、協会けんぽや健康保険組合に交付申請を行うことで交付されます。
<退職に伴う後任への引継ぎ>
1、業務の総体的な説明をする
通常、複数の業務を担当していることが多いため、その業務の優先順位や目的、社内での位置づけなど全体像を説明すること、後任者も理解しやすいです。
2、いつ、何をすべきかをまとめさせる
「月初に入金を確認する」など、1ヶ月の間で何をすべきか、一覧表を作成させ、業務の進捗状況や今後の見通しなどもまとめさせます。
3、顧客対応中に起こったトラブルなどをまとめさせる
これまでの担当業務や、顧客との間でトラブルがあった場合は、その経緯を示しておくことで、顧客とのトラブルを回避できます。万が一のために、その対処法も教えさせておくとよりよいかと思います。
4、書類をファイリング
業務上必要な資料やマニュアルは、案件ごとにファイリングさせたり、パソコン上でフォルダを作らせて、その所在も明確にさせておきます。
5、顧客の連絡先
顧客の連絡先も案件ごとに分けて、連絡先以外にも担当者の名前や折衝時の注意点などもあわせて書かせておくとよりよいです。
最後に
従業員の退職にあたっては、従業員側、会社側の双方が行うべきさまざまな手続きがあります。従業員側は、退職届の提出や業務の引継ぎに加え、退職後すぐに再就職しない場合は年金や健康保険の手続きなどを行います。一方、会社側は貸与物の回収などのほか、保険の資格喪失手続きなど複数の行政に関する手続きをしなければなりません。抜け漏れや期限をすぎることがないよう、チェックリストを作成するなどして確実に手続きを行うと良いでしょう。
こういった手続きについての提出方法など疑問がありましたらいつでもお気軽にご相談ください!