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名古屋自動車学校事件最高裁判決~定年再雇用後の基本給・賞与の待遇差は違法か?

皆さん、こんにちは。大阪オフィスの伊藤です。

掲題の事件について、今年の7月に最高裁判決が下されました。

争点となったのは、正職員と嘱託職員との待遇差(基本給・賞与にかかるもの)が違法か否かというところです。嘱託職員とは、定年後に再雇用された職員のことを言いますが、この判決の内容が、まさに御社の嘱託職員にも該当するものかもしれません。

当該事件は、自動車学校で勤務をしていた嘱託職員が、「定年前と同様の教習指導員の仕事を行っているのに、基本給と賞与が従前の60%を下回るなどしている。これは不合理な取扱いで、違法ではないか」と訴えたものです。

第一審と第二審は原告の訴えどおり、この待遇差を「労働契約法20条でいう不合理なものであり、違法」という判断を下したのに対して、最高裁はこれを「違法とは言えない」と差し戻しを行いました。その理由は、ざっくりと以下のとおりです。

①基本給及び賞与の性質や、これらを支給することとされた目的を踏まえて諸事情を考慮するべし

→この会社では基本給は勤続年数を反映したものとはいえず、功績給も含まれているところから鑑みると、一概に退職後も従前金額をベースに基本給を決定すべきとは言えない。

また、嘱託職員の基本給は正職員の基本給とは異なる基準で支給され、勤続年数により増額される仕組みもないことから、正職員の基本給とは別モノと見るべき(同じ基準で額を決定する必要は必ずしもない可能性がある)。

賞与については支給されていないが、一時金がこれに代替するものと考えられる。

②当該案件を含む労働条件の見直しについて労使交渉を行っていたが、その内容や経緯について勘案していない。

とはいえ、この差し戻し決定から「定年退職者の給与は下げても大丈夫なのだ」と単純に考えるのは非常に危険です。

今回の件では、基本給や賞与についてそれぞれ支給の目的や性質が正職員と嘱託職員で異なる可能性があり、差し戻し(=再検討せよ)となりましたが、やはり「不合理な待遇差である」と認められれば、違法となります。ですので、定年後も職務や責任がほぼ従前と同じ、という場合はこのような訴訟に発展するケースがありますし、就業規則などで給与規定を整備していないなどとなると、そもそも性質や目的も説明のしようがありません。そうならないように、賃金規定や再雇用契約の内容については、是非、確認をしておきましょう。

というわけで、差し戻し後の第二審の判断が待たれるところです。

引き続き注目していきますので、機会があれば、第二弾としてご案内します。

それでは、また。


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