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労働法解釈 解雇⑤
皆さんこんにちは。社会保険労務士法人アシストの藤武です。
前回は解雇権における濫用法理のうち「社会通念上相当である」という点について、実例を挙げて確認しました。
今回は同解雇権濫用法理のうち「客観的に合理的な理由」について解説をいたします。
解雇の「客観的に合理的な理由」は次の4つに分類されます。
①労働者の労務提供の不能や労働能力又は適格性の欠如・喪失
②労働者の規律違反行為
③経営上の必要に基づくもの
④ユニオン・ショップ協定に基づく理由
①は傷病や障害などによる労働ができない状態となることや、勤務成績不良、重大な経歴詐称などもここに入ります。
②は職場内での行動において、規律を乱す行為であり、横領、窃盗、暴行などもこれらに分類されます。また、セクハラやパワハラなどのハラスメント行為もここに分類されます。
③は経営不振による人員整理や会社の解散などです。
④は使用者が労働組合に加入しないものや労働組合から脱退ものを解雇するというユニオン・ショップによる解雇です。
これらの分類に該当しなければ解雇は解雇権を濫用したものとして無効となります。
なお、これらの「客観的に合理的な理由」が認められる場合であっても、前回の「社会通念上相当」でなければ同様に解雇権を濫用したものとして扱われることになります。
解雇を裁判所の決定という点でまとめると、解雇の事由が重大なものであり、解雇の回避ができる状態ではなく、労働者に情状する事情がない場合に裁判所は解雇を認めるということになります。
過去の判例は、同様の裁判があった場合の大きな指標になります。
また解雇権の濫用のように、法理からさらに法制化されることもよくあることです。
解雇をしたいと考えた場合には、最悪のケースを想定し裁判になった場合に、どのような決定がされるかを把握していくことが大切といえます。
社会保険労務士 藤武雅之