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労働法解釈 解雇④

皆さんこんにちは。社会保険労務士法人アシストの藤武です。

前回は就業規則上の解雇事由記載の必要性を確認しました。

前回の終わりに「解雇の客観的に合理的な理由」について確認としましたが、先に、「社会通念上相当である」という点について確認していきます。

これは実際の裁判事例を確認することがわかりやすいので例示します。

(独立行政法人労働政策研究・研修機構のHPより引用)

高知放送事件 最二小判昭52.1.31 労判268-17

(1)事件のあらまし

原告労働者Xは、放送事業を営む被告Y会社のアナウンサーであった。昭和42年に、Xは2週間の間に2度、宿直勤務の際に寝過ごしたため、午前6時からの定時ラジオニュースを放送できず、放送が10分間ないし5分間中断されることとなった。

また、Xは2度目の放送事故を直ちに上司に報告せず、後に事故報告を提出した際に、事実と異なる報告をした。Yは、上記Xの行為につき、就業規則15条3項の「その他、前各号に準ずる程度のやむを得ない事由があるとき」との普通解雇事由を適用してXを普通解雇した。Xは解雇の効力を争い提訴した。

(2)判決の内容

労働者側勝訴

Xの行為はYの就業規則15条3項所定の普通解雇事由に該当する。しかし、普通解雇事由がある場合にも、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になる。Xの起こした放送事故はYの対外的信用を著しく失墜するものであるが、しかし他面、本件事故はXの過失によるもので悪意ないし故意によるものでないこと、先に起きてXを起こすことになっていたファックス担当者が2回とも寝過ごしており、事故発生につきXのみを責めるのは酷であること、放送の空白時間はさほど長時間とはいえないこと、Yは早朝ニュース放送の万全を期すべき措置を講じていないこと、Xはこれまで放送事故歴がなく平素の勤務成績も悪くないこと、ファックス担当者は譴責処分を受けたに過ぎないこと、Yにおいて過去に放送事故を理由に解雇された例がないこと等の事実に鑑みると、Xに対し解雇をもってのぞむことはいささか過酷に過ぎ、合理性を欠くうらみなしとせず、必ずしも社会的に相当なものとして是認することはできないと考えられる余地がある。従って、本件解雇を解雇権濫用とした原審の判断は正当である。

この裁判例をみれば一目瞭然ですが、たしかに就業規則にも解雇事由として該当している、また労働者にも非があるのは明白ではあるが、解雇の処分が労働者に対する仕打ちとして過酷ではないか、という観点が「社会通念上相当」であるかの判断になります。

労働者を雇用する企業において、その一労働者を未来永劫雇用することはできません。

その中で解雇という事象も発生する可能性があり、その際にどのようなリスクとその解雇が妥当かを判断する力が必要になります。

次回は「解雇の客観的に合理的な理由」について確認します。

藤武雅之


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